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HONDAベンリィのキックは降りるけど全く戻ってこない症状の修理です。
バラシは簡単ですが組立てには順序があるので注意。
今回は”キックペダルは降りますが、戻ってこない症状”にあたります。
つまり、ただのグリス切れが原因だと思いますが、実は前回エンジンオイルが空のまま結構な距離走っているので念の為もありきちんと開けて確認したいと思います。
という経緯があるので、この場合は誰でも嫌な予感も過るわけです。
キック一つでエンジン系の色々な症状が分かる目安判断となります。
詳しくはこちら参照
チェック✔:キックから分かる事
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バイクにおけるキックの役割と整備における症状判断
現状バイクには電気バイク以外、キックペダルが必ずついていますが整備目線的にこいつの教えてくれる不具合症状と役割についてです。 キッ ...
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※今回は初めての駆動系の左クランクケースに異物混入のとんでもない危険事象がおきました。
おなじベンリィに乗ってる方なら私で起こったことなので少なくとも多かれ少なかれある事のはずなので重々注意を!
ベンリィ50のキックペダル不具合修理方法
おおよそですが、「キックペダルは降りてエンジンはかかるが戻ってこない。」
というこのパターンの場合はエンジン系不具合ではなく”駆動系クランクカバーのキックペダル部ギアのグリス切れ”が原因である事が99%です。
理由は、
- キックが重かろうが降りる時点で完全な焼きつきではない(但し焼きつき前の可能性もあるのでキックの重さも重要)。
- スカスカではないので圧縮もれではない(そもそもエンジンもかかりきちんと走る時点で圧縮はある)。
ベンリィ50の駆動系クランクケースカバーを開ける
まずは”六角棒スパナ”や”ヘックスビット”で左クランクプラカバーを外す。
六角穴ボルトは3つです。
”12mm”ボルトを外して”キックペダル”を抜き取る。
あとの調整が面倒な人はここにマジック(※動画参照)。
キックペダルを抜き取ると、プラスチックカバー(大)が外れます。
(小)の方も外しますが、こちらは”8mm”ボルト2つです。
”10mm”ボルト1つ・”8mm”ボルト8つを外す。
クランクケースカバーをひっくり返して”プレートカバー”を外します。
”プラスねじ5つ”です。
軽度の人はここにグリスアップするだけでOKです。
※キックドリブンギアは必ず抜いて、洗浄とグリスアップが必要。
※トップ以外は全てグリスアップ。
ばらさない人もドリブンギアだけは外してグリスを塗る事。
とんでもない異物混入事例
今回はなんとクランクケースカバーに”石”が混入してました。
一時期変な音はしてたのですが最近収まってたので気にしてなかったらまさかの石とは。。。
いくら排熱穴があるからといって、ここには外に側にプラスチックカバー(大)があり、更にはアルミパネルプレートカバーがある部屋に入ってました。
これだから思い込みはダメでなんでもきちんとチェックですね。
これがクラッチやプーリー側で暴れまわってたらと思うとゾッとします。
ほんとに開けて良かったですが初めての経験で気が引き締まります。
固着重度の場合|キック部オーバーホールの方法[※動画参照]
ドライブベルトの切れ端を巻き込んでいたり、重度の人はキックペダルカバーのギアを全て外す。
外すのは簡単ですが、組み方には順序があります。
”エキスターナルサークリップ”があるので”スナップリングプライヤー”を使います。
全てばらして、”パーツクリーナー”で洗浄。
キックギアの組み方(注意)|ベンリィの場合
グリスアップしながら組んでいきます。
※スプリングがあるので手をケガしないように気を付けます。
スピンドルギア受けにグリスを塗り”スプリング”を入れる。
この時、スプリングはまだどこにも引っ掛けない事。
スピンドルギアの軸付け根(サークリップ点より下側)と受け部にグリスを塗る。
スピンドルギアを垂直に挿入して、切欠き部にスプリングを引っ掛ける。
※この時スプリングを上に引っ張り過ぎないギリギリで行う事。
片方のスプリングが効いてるので、手の力で図の位置までもってくる。
この状態で”ハンマーでスピンドルの中心をたたいて”押し込む。
すると一番奥まで入り、この状態になります。
※この時下までピッタリ引っ付けるので、スピンドル下のスプリングが台座に挟まってない事が必要です。
そして、最後にスプリングの逆端を引っ掛ける。
ドリブン入れる前に表面にして、”ワッシャー”と”サークリップ”を装着。
再度ひっくり返して”スピンドルギア山”と”キックドリブンギア受け部”をグリスアップ。
【重要】キックドリブンギアの”スプリング溝”・”ギア山”・”シャフト”・”ワッシャー”にグリスを塗る。
※ワッシャーは端っこにかけておいて受け穴に挿入する。
キックペダルを仮装着して、スピンドルギアの”潰しギア山”より奥の位置で、”ドリブンギア”を指で押し込む。
これで完了です。
あとは駆動系のレフトクランクケースへカバー類全て装着して作業が完了です。
最後に確認
メモ
圧縮の意味でしっかり”押し込めれば”OKで、もちろん”戻り”も復活するか確認して完了です。
50CC程度なら手でも確認できます。
※これでも症状が直らない場合
基本他の症状としては、腰上エンジンor腰下エンジンに原因があるため、なかなかの大作業修理となります。
その判断になるため、キックギア部のグリスアップでの確認作業は大切です。
ベンリィ50のキックペダル修理で必要な部品・工具等
部品類:
今回は部品交換はありません。
工具類:
●サークリッププライヤー|スナップリングプライヤー
キックペダルシャフト固定のサークリップを外すのに使います。
●モリブデングリス
今回は”左クランクケースキックギア”でグリスアップに使用。
バイク用には基本、重圧や回転に強いモリブデングリスを多用しますので重宝します。
特にエンジン・足回りはこればかりです。
●ヘックスビット|六角棒スパナ
ベンリィは左クランクにプラスチックカバーがあるのでこれを外すのに使用。
●インパクトドライバー
DIYする人も整備する人も一つは欲しい電動インパクトドライバー。
大衆アメリカ工具ですが汎用性が高く高パワーのためおすすめです。
【ベンリィ50】症状別トラブル:キックがカチカチで戻らない修理|オーバーホール作業動画
今回は一応は一番単純な”キックペダルギアのグリス切れ”でしたので助かりました。
しかし、今回開けてなければ異物混入の発見は出来ませんでした。
10年以上で初めてです。