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今回は2stジャイロUPの症状別トラブル修理、セルモーター(スターティングモーター)が回らないときの故障点検修理方法です。
※4stジャイロX(TD02)や4stキャノピー(TA03)のACGスタータータイプは除外。(他・スマートディオ・スクーピー・ズーマー等)
つまり今回はセルモーターがエンジンの外(=駆動系クランク裏側)についているタイプの全てのバイクの話です。
故障した場合、セルモーターだけが原因とは限りませんのでバッテリー周り不具合の可能性もありますのでキャブ車はキックで乗り続けられますが、FI車の場合は無理に乗り続けずに早めに修理した方が無難です。
セルモーターはバッテリーからのスイッチ類を通して通電させて大電流を流して動かすためバイクの電装系の中でも独立しているため、ジェネレーターやレギュレーター等は関係無いので簡単ですのでご安心を。
バイクのセルモーターが回らない場合の点検場所は「4箇所+α」です。
まずはジャイロは横広の為見やすいのでハーネス回線は以下の通りです。(フレーム形状が異なるだけで2輪も同じ)
これらを点検・修理していきます。
ちなみに今回の症状はキックでエンジンは元気にかかりますので、完全にエンジン側と電装系と切り離して考えますので電装系の故障です。
もちろん電装系から離れて、駆動系側のセルモーターが押し出すスターターピニオンが固着や故障している等別次元の事もありますのでそこは要注意ですが今回はエンジンがかからないではなく、セルモーターが回らない場合の症状です。
セルモーターの電気回路の仕組みと流れ
乗り手側の簡易流れとしては、スイッチ「カチッ」→セルモーター「キュルルル」→ピニオンギア「ガチン」→エンジン始動「ブルブ~ン」
詳しい仕組みとしては、
- メインキーをONに回してバッテリーから直流DC電流をバイク全体へ回しますがまだスターターリレーへの通電はしてません。
- ブレーキを握りながらセルボタンスイッチを押してバッテリーからスターターリレーまで通電させます。
乗り手としてはスイッチ連動ですが、厳密にはブレーキ通電と連動してます。 - その後スターターリレーでリレー内コイルを通し電流を大きくしてセルモーターまで通電させるとモーターが回ります。
- 回転したモーターは駆動系スターターピニオンギアを回して飛び出させます。
- この飛び出したピニオンギアが駆動系ドライブフェースのギアと噛む事によってプーリーを回転しエンジンを掛けるという仕組みです。
以上の事から経験と理屈上、故障の多い点検場所は4点+α。
+αとはその他ショート・断線等です。
ごちゃごちゃなハーネスも冷静にみれば大枠ではこんな感じで、ここからさらに枝別れしているだけです。
これらを理解した上で点検をしていきましょう。
バイクのセルモーターの点検方法と修理方法|4箇所の点検
まずは大前提としてヒューズの確認をして下さい。
メインヒューズ・サブヒューズ共にです。
1:バッテリー|電圧不足
冒頭書いた通りセルモーターはバッテリーからの直流DC電流ですので、全ての点検もバッテリーが正常である事が前提です。
バッテリーが5Vしかない(=死んでいる)場合や古い場合は充電・交換して下さい。
2:セルスイッチ・ブレーキスイッチ|接点不良
ここが接触不良で電気が来てない場合はスターターリレーのカチカチ音すらしません。
音がしないから必ずここセルスイッチという訳では無くリレーの焼けの場合もあります。
ただしセルスイッチ部の接点不良は結構多い症状ですので一度整備してあげましょう。
[重要]ブレーキランプに関して(HONDA車)
セルスイッチにて通電すると思いがちですが、配線図見れば分かりますがブレーキリレーと連動しています。
ブレーキリレーやカプラーの配線抜けが無いかの確認もしてみて下さい。
ポイント
右ブレーキレバー引いてセルは回るのに、左ブレーキレバーではセルが回らない症状の人とかはこのブレーキリレー(フロントストップスイッチ)が原因です。
3:スターターリレー(中継器)|コイル・マグネット故障
リレーのカチカチ音
よくあるスイッチを押すとどこかから聞こえる「カチカチ音」はスターターリレー内の誘電棒がスイッチ配線器具に当たる音です。
常に毎回なってますが、普段はセルが回る音で気づかないだけでセルが故障した場合はこの音が目だつというだけです。
もちろん通電してるからこそ動くわけですが、逆に上記「1~2」が正常でも全く音がしない場合は確実に壊れてますので要交換となります。
スターターリレー確認点検方法|※動画参照
これはテスターを使用して導通を測りますので【※動画参照】して下さい。
まずは配線図を用意して連動箇所を見て導通テストを行います。
このバイクの場合、4Pカプラーですのでスターターリレーとは「バッテリー」「セルモーター」「テールランプユニット」「セルスイッチ」と連動している事がわかります。
5Pカプラーの場合はFi車が多く、5つ目はコントロールユニットに繋がる事が多いです。
面倒な人はスターターリレーは安いので交換すればこの項目はもう終わりです。
注意ポイント
※スターターリレーは中でコイル側(バッテリー・セルへ出力)とスイッチ側(入力+アース)に分かれていますので、それぞれの測り方がありますのでご注意下さい。
どのバイクも太い配線が2本必ずあるはずですので、バッテリーから配線とセルモーターへ出力する配線です。
サービスマニュアルでのこの測り方だけ面倒ですのでスイッチ側を延長してあげると楽です。
最後にスターターリレーからセルモーターまでへの導通があるか確認してスターターリレー点検が完了です。
抵抗値「Ω」で、きちんと0に近い数字が出るか確認して下さい。
「O.L(オーバーレンジ)」表示が出るとショート・断線してます。
4:セルモーター自体の故障点検|コイル焼け・ブラシ消耗・永久磁石割れ
スターターリレーからセルモーターは繋がっていますので、モーター自体へ(+)プラスカプラーから入り、(-)マイネスボディアースへ電流が抜けます。
この時セルモーターが故障していると通電が不可能になるのでセルモーターのオーバーホール又は交換が必要となります。
セルモーター自体の抵抗値を測る
カプラー部にプラス(+)・アース部にマイナス(-)を当てて抵抗値(Ω)or導通確認をする。
0に近ければOKですがテスター、抵抗値が高ければ故障及び劣化してますのでオーバーホール又は交換が必要です。
セルモーターオーバーホールの方法|おまけ
全て電極復活剤(クレ226等)で綺麗にして下さい。
特にコイルのブラシ擦れによる黒汚れの除去は大事で抵抗値影響が大きいです。
永久磁石確認✔
N極・S極ともに割れ、剥がれが無いか確認。
ブラシ確認✔
ブラシは残っていればOK、消耗しすぎていれば交換するだけです。
コイル確認✔
焼けが無いか確認。私のは異常に白いですねこれ異常です。
※希望:「何故こんなにコイルが白いのかご存知の方教えて頂ければ幸いですm_m」
ブラシ接合部確認✔
ここが大事!汚れの蓄積が一番抵抗値Ωを高くして、通電の邪魔をしますので要掃除。
※段差が出来てる場合はもうセルモーターの交換です。
オーバーホール完了後テスト
まさに動画内でも出ていますが、テスターで導通はOKで生きていても元気かどうかは別問題です。
したがって、完了後はテスター測定+バッチョク確認の2段階確認をした方が良いです。
今回はまさに電流テストではなく導通テストなので、テスターではOKでもバッチョクすると死んでいるのが解りました。
したがって交換してセルが復活にて作業完了です。
バイクのセルモーター故障修理に必要な部品類・工具類
今回はジャイロアップを使用してますのでジャイロのセルモーターです。
部品類:
●セルモーター
純正番号:31210-GR1-014(初号機除く)
社外品の場合品質は劣ります。
●スーターターリレー
純正番号:38501-GN2-014(前期)
純正番号:38501-GAM-007(中・後期)
※社外品の場合「不良品やサイズ違いに当たる」事もあるようですので、必ず純正品を使用するようにご注意を。
以下は参考です(使えるか不明)↓↓↓
●バッテリー
純正番号:YT4L-BS(ユアサ)・FT4L-BS(フルカワ)
最初の要です。
※整備慣れしてる人は液別タイプがおすすめです。
●フロントストップスイッチ|ブレーキリレー
純正番号:35340-GC1-010(前期)
純正番号:35340-GN2-003(中・後期)
工具類:
電気系統ですのでそれなりの溶剤やテスターが必要です。
●クレ226(電極接点復活剤)
今回は”スイッチ洗浄・カプラー洗浄・セルモーター洗浄”で使用。
セルスイッチから、バッテリー、オートチョーク、コネクタ全部、あらゆる電極に使用可能な電極接点復活剤。
KURE(呉工業) 2-26 (180ml) [ For Professionals ] 防錆・接点復活剤 [ 品番 ] 1020 [HTRC2.1]
●電気テスター
これは一つは必ず持っておきましょう。
配線に電気が来ているか、そして何Vで何A来ているかが即座に分かります。
通常の電気針+ミニクランプ付き
※クランプ式はほとんどがACのみで、0.1Aが限界のテスターが多いです。
※クランプ式はごちゃごちゃ配線の場合掴みが太いのでしんどい作業になります。
※安物すぎるものは小数点以下表示に注意。
※おすすめは”AC/DC対応・0.01A”を捉える事が出来る精密な”半クランプ”のこいつ。
これがこの価格。家庭の配線にもおすすめです。
※機能やサイズなど異なりますので型番間違えないように要注意。2012番RAです。
共立電気計器 (KYORITSU) 120A RMS AC/DCクランプ付デジタルマルチメータ KEWMATE 2012RA
使えば唯一無二のAC/DC対応0.01A商品と分かります。(普通3万円以上)
トラスコからも近似価格で出てますがクランプと本体が一体型でしかも0.1Aまでしか電流分解出来ません。
テスター注意点
※壊すときは大抵電流(A)もしくは電流から電圧に針をつけたまま切り替える時です。小学校の時習いましたが大き目設定値からどんどん小さく計測していきますがヒューズ入りですが念のためお気を付けください。
※怖い人はバイクの場合、電圧・抵抗値の2つを使用すればテスターを壊す事もありませんし、これはデジタルなので(+)(-)逆に付けてもマイナス表記されるだけで壊れません。
バイクのセルモーターが回らない時の点検方法と故障修理作業動画
今回のセルモーターが回らない症状の点検・修理作業動画です。
※車両はジャイロUPですがセル付バイク共通です。